大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和25(あ)374 判決

主 文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理 由

弁護人松島政義の上告趣意について。

当該判決裁判所の公判廷における被告人の自白が憲法三八条三項にいわゆる「本

人の自白」に該当しないことは当裁判所の判例とするところであり、刑訴法三一九

条二項の規定を理由としてこれを変更する必要のないことも亦当裁判所の判例に徴

して明かである(昭和二三年(れ)第一六八号同年七月二九日大法廷、昭和二三年

(れ)第二〇六三号同二四年一二月二一日大法廷各判決参照)。然るに、本件第一

審判決は被告人に対する判示犯罪事実を、被告人の第一審公判廷の自白及び盗難届

書、司法警察員竝びに検察官に対する被告人の各供述書(自白)を綜合してこれを

認定しているのであるが、本件については当該判決裁判所の公判廷における被告人

の自白がある場合であるからこの自白を補強する他の証拠を必要としないわけであ

る。されば原判決が第一審判決について、判示賍物運搬の事実を認定するのにその

引用の盗難届書をもつて被告人の自白の補強証拠たり得るとしたことは余剰の説示

であつて、その判断の当否を問はず論旨の理由のないこと明かである。そうして本

件について刑訴法四一一条を適用すべき事由は認められない。

よつて同法四〇八条一八一条を適用し主文のとおり判決する。

右は裁判官小谷勝重の反対意見を除き裁判官全員一致の意見である。

裁判官小谷勝重の反対意見は次のとおりである。

憲法第三八条第三項に関する私の見解は、すでに本判決引用の昭和二三年(れ)

第一六八号大法廷判決において反対意見として明らかにしておいたところであつて、

当該判決裁判所の公判廷における被告人の自白も亦憲法同条項にいわゆる「本人の

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自白」に該当するものといわなければならない。そして、被告人に対する犯罪事実

を認定するには、当該犯罪構成要件事実の内、少くともその客観的部分については

被告人の自白のみをもつてしては足らず、必らずや他にこれが補強証拠の備わるこ

とを必要とするものというべく、これこそ憲法第三八条第三項の要請するところで

あると信ずる。ところで本件の賍物運搬罪については、その構成要件として当該物

件が賍物たること、被告人がこれを或る地点から他の地点迄運搬したこと、及び被

告人がその賍物たるの情を知つていたことの各要件を必要とするものであるから前

二者の客観的要件事実についてはこれを認定するに被告人の自白のみをもつてして

は足らず、これが補強証拠を必要とするわけである。然るに、本件賍物運搬罪にお

いて第一審判決は証拠として前示多数説に示すとおりの証拠をあげているが、その

内被告人の自白以外の証拠としては結局盗難届書唯一つである。そして右盗難届書

をもつてしては、本件物件が盗品たることの補強証拠たるに止まり、未だ被告人が

判示のごとくこの物件を運搬したという事実については到底これが自白を補強する

証拠たり得るものではない。然らば第一審判決は被告人の自白のみをもつて被告人

に対する犯罪事実を認定した違法あるものというべきである。従つて、本件におい

て右盗難届書のみをもつて被告人の自白の補強証拠として必要にして十分なりと判

断して第一審判決を是認した原判決は正に憲法第三八条第三項に違反するものとい

うの外はない。なお、この点について原判決引用の当裁判所判例は本件に適切なも

のではない。されば論旨は理由があるから本件は刑訴法第四一〇条第一項本文第四

一三条本文により、原判決及び第一審判決破棄の上これを佐賀地方裁判所に差戻す

を相当と考えるものである。

昭和二五年一二月一五日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 霜 山 精 一

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裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 藤 田 八 郎

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